米国経済の大転換?ベッセント財務長官×タッカー・カールソン対談まとめ

2025年4月4日にスコット・ベッセント財務長官とアメリカの保守派政治コメンテータータッカー・カールソンがアメリカ経済の未来と関税政策について対談する動画がアップされました。

(出典:YouTube動画より)

トランプ大統領が発表した「新関税体制」40年来の公約をついに実現したこの動きは、経済界に衝撃を与える一方で、支持者からは喝采を浴びています。

タッカー・カールソンが財務長官スコット・ベッセントに深く切り込む特別対談が実現し、ネット内で多くの注目が集まっています。

対談動画は約1時間ありますが、本記事は対談における重要部分を要約しています。

皆さんの投資の参考になれば幸いです。

◎関税のルーツと現代的再解釈:ハミルトン主義の復活

「誰も耳を貸さなかったが、関税政策の本質はハミルトンにある」

とベッセントは開口一番に発言しました。

米国初代財務長官アレクサンダー・ハミルトンの思想ですね。

ハミルトン氏の関税に対する考えは以下3点につながる活用でした。

①政府の収入源

②産業保護

③外交交渉の手段

今回の関税政策も、この3要素をすべて内包する包括的政策のようですね。米国の経済主権を取り戻すだけでなく「安全保障としての経済」が再定義がなされているようです。

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◎チャイナショックの残滓とアメリカ中流層の没落

「ようやく学界も2004年以降のチャイナショックによる被害の深刻さを認め始めた」

とベッセントは指摘しています。

当時のチャイナショックを振り返ってみましょう。

なぜ「チャイナショック」が起きたのか?

① ことの発端は中国のWTO加盟(2001年)したことから始まります。

2001年12月、中国は世界貿易機関(WTO)に加盟しました。
これにより関税・輸出入規制が大幅に緩和され中国製品が爆発的に世界中に流入するようになり、特に安価な工業製品(家具、鉄鋼、繊維、電子機器など)がアメリカ市場を席巻します。

② 米中の比較優位と現在の貿易構造が構成されていく

中国は労働コストが極端に低く、政府による補助金政策もありコスト競争力が非常に強かったです。米国では、中西部の製造業が構造的に中国に負ける形となり、雇用が急速に消失していきます

その結果、米国で何が起きたのか?

➡︎製造業の急激な空洞化と中間層の没落と所得格差の拡大

ピッツバーグ、デトロイト、ヤングスタウンなどの「ラストベルト」と呼ばれる工業地帯で数百万単位の雇用が失われました

米国経済政策研究所(EPI)によれば、2001~2018年で340万人の雇用が中国への輸出代替で失われたと記録されています。

工場閉鎖により、地域全体の所得・税収が激減し、インフラ・教育・治安にも悪影響。薬物依存、うつ病、自殺率の上昇、平均寿命の低下などの「社会的病理」が局地的に蔓延していきました。
 

高学歴・都市部のエリート層が恩恵を受けた一方で、非大学卒・手に職系労働者は深刻な所得停滞・資産減少。下位50%世帯の資産は伸び悩み、格差の「固定化」現象が顕著になります。

✅ 中国製品の輸入増加と米国の製造業雇用減少は強く相関し、因果関係がある

✅ 自然な再配置(雇用の移転)は起こらず、長期にわたって地域は回復不能状態に陥った

✅ 政府の再訓練プログラムやセーフティネットは機能不全だった。

トランプ大統領が2016年に掲げた「アメリカ・ファースト」「関税強化」「中国制裁」は、チャイナショックへの明確なカウンター政策。

チャイナショックによる影響は米国経済に大きな打撃と貧富の差を拡大させました。 現在の貿易赤字は、アメリカ社会の分断と政治の再編をもたらした現象です。「グローバリズムの代償」として歴史に刻まれたチャイナショックは、新たな保護主義政策の正当化根拠ともなっています。今、トランプ政権が進める新関税体制や再工業化戦略は、このチャイナショックの反省と再建の試みでもあるわけです。

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◎パンデミックが露呈した脆弱性と国家戦略の転換

新型コロナウイルスは、米国のサプライチェーン依存のリスクを世界に知らしめました。

「医薬品を自国で製造せず、半導体も船も輸入依存。これでは国家の安全が担保されない」

とベッセント氏は断言しています。

この反省から生まれたのが「経済安全保障=国家安全保障」という概念です。今後は国内製造への回帰とスマート工場化によって、堅牢な産業構造への転換が進むのを現在のトランプ政権は目指しています。

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◎株式市場至上主義からメインストリート重視へ

「市場は短期的に『投票マシン』であり長期では『計量マシン』である」

とバフェットの言葉をベッセント氏は引用しました。

現在の株価の変動は一時的とし「MAG7(巨大テック株)の調整であり、MAGA(Make America Great Again)の失敗ではない」と分析しています。

「今こそメインストリートの番だ」と語り真に国民の生活を改善するための経済政策を進める姿勢を明確にしました。

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◎関税は増税にあらず:中間層向け減税の財源へ

新関税体制の導入により最大年間6,000億ドルの歳入が見込まれていますが、この資金は以下の4つの減税政策に活用される予定です。

✅ チップ税の減免

✅ 社会保障税の非課税枠拡大

✅ 残業賃金への課税軽減 

✅ 国産車ローンの利子控除制度

「10%の関税のうち、実際に消費者が負担するのは2%以下」である

とMITの最新研究を引き合いに、ベッセントは関税が国民生活に与える影響は最小限であると強調しています。

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◎工場を国内へ:再工業化による新雇用創出

ベッセントは

「最終的には関税をなくすことが理想」

だと語る。

その理由は国内での生産移転が進めば、関税収入に代わり、雇用と所得税収が増加するからだ。

DOGE(政府効率化局)を通じて連邦職員の一部を民間製造業へ移行させ、労働市場の構造改革も視野に入れている。

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◎外交戦略と企業誘致:勝つのは工場を建てた者

「外国と交渉するより、企業と交渉する方が早い」

台湾セミコンダクターの米国進出、エネルギー政策、規制緩和、税制優遇など、政府は包括的な支援体制を敷いている。

「アメリカで売りたいならアメリカで作れ。それがトランプ大統領の一貫したメッセージだ」

とベッセント氏はメッセージを残します。

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◎格差是正と生活防衛:米国の二重構造に挑む

2024年夏にアメリカ人は史上最多のフードバンク利用と海外旅行記録を同時に更新しましたが、貧富の差がすごく広がっています。

「これは壊れたシステムの表れである。下位50%は決して敗者ではない。彼らは“機能しない仕組み”に押しつぶされた犠牲者であり将来の勝者だ」

とベッセント氏は発言しています。

労働者階級の是正を測ろうとしてるところが見受けられますね。

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◎最後に:ベッセントの覚悟と信念

「私の役割は、米国債を世界に売るセールスマン。だが、それ以上に“経済という船の航海士”として、嵐を乗り越えなければならない」

と発言されました。

「パンデミック、地政学的リスク、FRBの動きなど、多くの不確実性の中で「常識」こそが最大の武器である。」

とも語りました。

関税政策をきっかけに、米国経済は果たしてどこへ向かうのでしょうか? 労働者階級は是正されるのでしょうか?新たな経済秩序の胎動が始まろうとしています。

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まねびば編集部

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